シュミレーションシステムの論文

●シミュレーション・システム論文2007

●インターネットを用いたヴァーチャル建築システムの開発

1.はじめに

「Wall Cell」は素人が建てることのできる家として共同研究者の三島昌彦氏が発明した建築工法である[1][2]
木製のブロックを積み上げることにより,簡単に家を建てることができる工法が特徴である。

従来にない工法なので,素人でも簡単に使える家の設計システムが必要である、
一般家屋の建築システムはいくつかあるが [3][4][5][6],専門知識のない素人には使い方が困難なものであった。

そこでWallCell工法による家屋の設計を支援し、素人の施主が使うことのできる「インターネットを用いたヴァーチャル建築システム」を開発している。

このシステムはインターネットで使える3Dグラフィックスによる設計支援を行い,施主自身が使って大まかな見積ができることを特徴とする。

2.WallCell工法の概要とシステムの目的

WallCell工法は素人が自分の家を他の工法に比べ簡単な手法で建築できることをねらいとしている、その結果として従来の木造住宅に比べて1/3から1/2の低価格化を目指している、
また杉の間伐材を利用することで,環境にやさしいエコハウスの実現を目指している。

図1はWallCellの概観であり,「レゴブロック」のようなセル単位で構成される

図2のように鉄筋コンクリートの基礎の上に幅長の半分ずつずらしながら積み上げて行くセルをずらすことによって壁面自体が強度を持ち全体を支える構造となる

要所にはセルの中に縦の鉄筋を埋めて,屋根桁、屋根パネルで締め強度を高める。
図3は試験的に建てられた10㎡のWallCell建築である。

休日に本校の学生を含め、三島氏と素人4人で作成したが、組立ては単純でほぼ1日で終わることができた。

この工法で素人が自分の家を作れるためには,素人にも簡単に使いこなせる設計システムが不可欠となる。

本システムはインターネットでどこからでも使え、施主は専門知識がなくても3Dグラフィックス画面でレゴブロックを組み立てるように家を組み立てられるようにする。

そして組み立てた結果から自動的に見積り金額や工数が算出され、それを参考に施主は設計内容を試行錯誤できるようにする。

3Dグラフィック画面からは容易に立面図及び平面図などの建築図面が取り出せるので専門業者への仕事依頼が素人にも可能になる。また作成した結果はデータベースに登録され、他のユーザも見本として閲覧利用できる仕組みとする、データベースを公開することによりWallCellのフアンを増やすこともねらいのひとつとしている。

3.システムの構成

本システムは設計部・費用計算部・データベース管理部・立面図/平面図作成部で構成される。図4に全体のシステム構成図を示す。

設計部はJava AppletとJava3D,費用計算部はPHPとMySQLを使用して実装している、ユーザが設計部を使って設計した家はデータファイル(家データ)に変換される。そのデータファイルを費用計算部が読み込み、データベースを参照し建設に掛かる費用、時間などを算出する。

クライアントの設計部はデータファイルを読み込むことで家を再構築し,3Dで表示することができる、立面図・平面図を作成する際にもこのデータファイルを読み込み,結果をクライアント側で表示する。

設計部の実装にはJava AppletとJava3Dを用いた.Java3DはJavaの標準的な3次元グラフィックスAPIで3D表現に使用できる.Java Appletはユーザの入力結果をサーバに送り,サーバで家データとして記録するようにした.

費用計算部は,CGIとしてPHPを使って実装した.データベースはPHPと親和性の高いMySQLを用いた.

4.システムの機能

4-1設計部

ユーザはWebブラウザからアクセスし,図5のようにシステム設計画面の2D部分に窓や扉がほしい場所の領域をマウスでドラッグし指定する.その結果,サーバ上に図6のような家データファイルを生成することができる.クライアントはこのファイルを読み込んで,図7のように家の外観を3Dグラフィックスに変換し,描写することができる.ユーザはマウスによって家を回転させることができ,家を自分の見たい角度から視覚的に確認できる.

現在,設計部では家の構成が変更されたとき、自動的に家データが書き換わるようにしている、そして費用計算部にある「更新」ボタンを押すことによりその家データを読み込み家の積算をもう一度行い画面に表示している。

家データのファイル形式を表1に示す、BHとはブロックに空いている穴を1BHとして、XXBHはXXの穴が空いているブロックの長さを表している。

そのXXに種類の判別のために接頭語としてブロックなら1をドアならFを着ける。例えば,8BHのブロックなら家データファイルでは108となり,9BHのドアならF09となる。

表1 家データのファイル形式

種類表記
XXBHのブロック1XX
XXBHのまぐさ3XX
XXBHの窓AXX~DXX
XXBHのドアFXX
BH:Block Holeの略.
XX:BH数

4-2立面図・平面図作成

立面図・平面図を自動的に作成することができる。まず、設計部にて作成された家データを自動的に読み込むことによって立面図を作成し表示することができる。

実際の画面を図8に示すメイン画面の立面図メニューをクリックすればこの画面が表示される.

また、立面図の左右に表示されているボタンをクリックすることにより,立面図の視点を変更することが可能である.

平面図も立面図と同様に自動的に作成できるのでメイン画面の平面図をクリックすると平面図が表示される.現在は,内装などの編集機能は実装していないので,縦横の寸法を表示するだけの機能にとどまっている.今後,内装を含めた平面図の詳細化が必要である.

4-3費用計算

表2 データベースのテーブル作成

フィールド名タイプ名説明
typeVARCHAR(10)10byteまでの文字列
measureMEDIUMTEXT1.6Mbyteまでのテキスト型文字列
priceINT4byteまでの整数
timeINT4byteまでの整数

データベースの内容として必要なものは設計側から出力される各パーツの値,各パーツの寸法,値段,施工時間が上げられる。

データベースのMySQLに登録する際には、表2のようにそれぞれをtype,measure,price,timeというフィールド名で登録している

フィールドにはタイプを設定する必要があり,typeには文字列型であるVARCHAR,measureにはテキスト型文字列のMEDIUMTEXT,priceとtimeは整数型のINTを設定している。

データベースの管理を行うためのプログラムも開発し,WallCellの仮データを登録した.

実際の見積り結果を図9に示す.費用計算部はユーザ側が特に入力操作をすることはない、システムが自動的に設計側で作成された家データを読み取りそれを解析して値段などをパーツごとに表示し、料金合計を計算する。

ユーザはこの料金合計を見て設計修正を行い, 再度見積りを繰り返すことで,自分の予算に見合った家の設計を行うことができる.

5.まとめ

WallCell工法による家屋の設計を支援し、素人の施主が使うことのできる「インターネットを用いたヴァーチャル建築システム」の開発を行った。

設計部は2Dで壁に窓やドアのレイアウトを自由に決めると自動で位置を整形する機能と家データファイルから3Dで家を表示する機能のプロトタイプを実現した.

そして設計部の家データから自動的に立面図・平面図を表示するという機能を持たせた。
また、費用計算部にデータベースを構築し、そのデータベースを読み込むことで自動的に家の値段,施工概算時間などの計算を行える機能のプロトタイプを実現した。 設計部は2D部分と3D部分を組み合わせて開発した.課題としてデータの共有がファイルの読み書きになっており、Java Appletをサーバ側のPHPと連携させる必要がある。

こうすることによってサーバ側にファイルを保存できるようになり、他人の設計した家を見ることもできるようになる。

最終的に2Dと3Dに分かれている設計部を3Dのみで出来るようにしたい、そのための技術課題は2Dの設計画面からマウスで3D物体を指定して操作するピッキングがまだJava3Dで実装できていないことである.

立面図の課題は,現在の設計部は設計する際に斜めの屋根を使用することができないため、斜めの屋根を描画できないことである。

内装を含めた平面図の詳細化も必要である費用計算部のデータベースの課題としては,WallCellの詳細なデータが不十分な点がある。現在はセルや窓、ドアが一ついくらであるかという程度しか決まっていない. 現在のデータベースはすべて暫定的なものである.実際に家を建てるためには,セルの中に埋め込む鉄筋や外装材,内装材なども必要である.今後,WallCellの仕様の詳細化に合せて,データベースの内容を詳細化する必要がある。

また実際のユーザのレベルで試用評価を行いながら問題点を洗い出し,改良を行っていく必要がある。

参考文献

  1. [1] http://wallcell-dandan.ameblo.jp/
  2. [2]特許: 特願2003-053466(2003).
  3. [3] http://homepage3.nifty.com/KCF/
  4. [4]株式会社ドキュメントシステム+シジシンデザイン室著:3DマイホームデザイナーPRO3オフィシャルガイドブック,ASCII
  5. [5]Virtools Dev2.1J: http://www.san-toku.co.jp/
  6. [6]<建築のテキスト>編集委員会:始めての建築CAD,学芸出版社(2002).

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